<序・第二世代 >
(なんと美しい少年であろう)
梁田弟河内守前廉は、隣に正座している蘭丸の容貌に感心し、キョロキョロと顔ごと動かした。
天正五(一五七七)年の新年、安土城に白い雪が降り積もった。十四歳の蘭丸は、この雪よりも清らかで美しい。
感心された蘭丸は、紺一色の上衣と袴で正座し、微動だにせず、前方を見すえ、ただ瞳の端に、同年輩の梁田前廉のくるくる変わる表情をチラチラと映していた。
(ずいぶん愛嬌のあるお方だな)
小姓の控え部屋にいたのは、この二人だけだ。
<一・はじめてのお使い>
圧倒。ただ圧倒。
<二・越後探索行>
信長が考えるのは、常に「勝利」のことだ。
<三・結縁>
反物に趣好を凝らすとは、一般的に織り方に工夫をすることを指す。
<四・坊丸出仕>
天正六(一五七八)年の新年がきた。
<五・血煙>
「魔法の武器だ」
<六・力丸出仕>
「兄上方!」
<七・結宴>
「幸福な家は一様だが、不幸な家は様々だ」
<八・妖刀「鵜の丸」>
敗者の群れが、駆けていく。
<後・誓い>
金山城の麓は、武士が出張っているものだから、静かである。田んぼ仕事をしている農民が、遠くにポツポツといるだけである。
<続>