3《狂奔編》

<序・『破』>

 

 

権力者の、権力を持つ右手を斬り落とせば、

彼らは権力を左手に握りかえる

左手を斬れば、右足で掴みなおす

右足を斬れば、左足で掴む

左足を斬れば、腹に挟み込む

腹を裂けば、口にくわえる

ゆえに、

結局は、首を斬るしかないのだ

 

 

 

 

<一・靄>

 

 

「おぬしは圭角が強すぎる」

渡辺越中をそう評したのは、亡き主の可成だ。

 

 

 

 

<二・初陣>

 

 

その甲斐あって――

 

 

 

 

<三・人間無骨>

 

 

深々と雪が降り積もるなか、渡辺越中は細野左近が持参した長可からの文を読み、わずかに嘆息した。

 

 

 

 

<四・阿弥陀、滅びよ>

 

 

この国は、アニミズムを基本とする神教に、仏教が加わった多神教が主体であったのが、戦国時代後期、新たに、種子島経由で、伴天連宗が入ってきた。

 

 

 

 

<五・火力 火力 火力>

 

 

その三人の男、いずれも人外のあだ名を持つ。すなわち、

 

 

 

 

 

<六・六斎の市>

 

 

林長兵衛が目を上げると、視界には天秤棒を担いだ野菜売りが雑兵相手にさばいていた。

 

 

 

 

<七・無軌道もの>

 

 

打ち合わせをしたわけでもない。顔を知っているわけでもない。名前すら知らぬ。――いや、存在すら知らない。にもかかわらず――

 

 

 

 

<続>

 

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