<序・『破』>
権力者の、権力を持つ右手を斬り落とせば、
彼らは権力を左手に握りかえる
左手を斬れば、右足で掴みなおす
右足を斬れば、左足で掴む
左足を斬れば、腹に挟み込む
腹を裂けば、口にくわえる
ゆえに、
結局は、首を斬るしかないのだ
<一・靄>
「おぬしは圭角が強すぎる」
渡辺越中をそう評したのは、亡き主の可成だ。
<二・初陣>
その甲斐あって――
<三・人間無骨>
深々と雪が降り積もるなか、渡辺越中は細野左近が持参した長可からの文を読み、わずかに嘆息した。
<四・阿弥陀、滅びよ>
この国は、アニミズムを基本とする神教に、仏教が加わった多神教が主体であったのが、戦国時代後期、新たに、種子島経由で、伴天連宗が入ってきた。
<五・火力 火力 火力>
その三人の男、いずれも人外のあだ名を持つ。すなわち、
<六・六斎の市>
林長兵衛が目を上げると、視界には天秤棒を担いだ野菜売りが雑兵相手にさばいていた。
<七・無軌道もの>
打ち合わせをしたわけでもない。顔を知っているわけでもない。名前すら知らぬ。――いや、存在すら知らない。にもかかわらず――
<続>